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イタセンパラ

Acheilognathus longipinnis REGAN 1969中村
Rhodeus (Acanthorhodeus) longipinnis (REGAN) 1976宮地・川那部・水野

コイ科タナゴ亜科タナゴ属
体長60〜80mm
濃尾平野、富山平野、淀川水系
側線は完全 口ヒゲはない


 
 八幡市木津川産未成魚  


 1974年に天然記念物に指定されました。成魚のオスの婚姻色は赤紫色を呈し、神秘的な美しさを持ちます。イタセンパラという名称は、タナゴ類の愛称をセンパラ(婚姻色が美しいことを鮮腹)と呼んでいましたが、とりわけイタセンパラは体が板のように薄く、鮮やかな腹をした魚ということで"板鮮腹"と書きあらわすことからきたようです。

 木津川でもモンドリを仕掛けると、1980年頃迄は他のタナゴに稀に混じって入ってきましたが、現在は見られません。主にタガイ、イシガイが産卵床のようです。淀川水系では随分以前に巨椋池という巨大な沼がありましたが、そこが主な生息地であったようです。タナゴ類の多くが春に産卵するのに対し、本種は秋が産卵期で翌年の春まで稚魚は貝の中ですごします。

 淀川のシンボルフィッシュとして、淡水魚保護協会の大変な労力には敬意を払わずにはいられませんでした。当時の建設省や他の公的機関からの圧力、嫌がらせを受けながらの関係者の努力には頭が下がります。
 また、当時から建設省のお抱え学者には疑問を抱いていましたが、カヌーイストの野田氏も著書で指摘されているのを拝見して、やはりそうであったかと思った次第です。当時、木村英造氏は「淡水魚の窓」というサイトを立ち上げられて現状を報告されていました。
 また、ムツゴロウこと畑正憲氏の「天然記念物の動物達 オオサンショウウオの川」にイタセンパラについて木村英造氏との会話を元に著作があり、プロの作家である畑正憲氏の暖かみのある文章で記されており、必読でしょう。

 問題は天然記念物に指定されても、生息地の指定ではないということです。これは当時からの巨大省庁からの圧力でしょう。ワンドは人工物ということで一蹴されています。巨大省庁は現在も延々と圧力をかけています。前述のカヌーイスト野田知佑氏の著作には河口堰問題にからみ生々しく語られています。

 現在、他の生息地においてもほぼ絶滅状態のようです。もっとも私の住居近辺でもタナゴ類全てが危機的状況にあります。かろうじてタイリクバラタナゴだけが良く見られますが、外来種ばかり残っても意味がありません。一番の原因は池がなくなったことと、供給源である木津川の致命的な水質悪化、ブルーギル、ブラックバスによる食害でしょう。特に環境要因はあっという間に魚達を絶滅に追い込みます。
 話しがそれますが、あの琵琶湖博物館はもちろん大変素晴らしいのですが、あの烏丸半島の広大なヨシ原の昔の姿を知っているだけに割り切れない思いがあります。矢橋人工島を埋め立てる為に掘った後の穴は、巨大なバスの釣りポイントとして大変有名です。(ディープホールと呼んでいます)。その人工島の東側は水が停滞し、かなり水質悪化が進行しています。イタセンパラの住める環境を守るということは、他の多くの魚種、野鳥、動物そして自然そのものを守ることにつながり、ひいては人間自身を守ることに必ずつながります。

 タナゴ類の産卵習性は特異な為に、古くから研究されていますが、闘争行動や産卵行動はバラタナゴ類とはわずかな差異があるようです。(淡水魚10号長田ら)また、人工増殖試験の現状と問題点(淡水魚10号宮下)では、1倍から20倍という極めて不安定であること。(天然水域では産卵数の10%が貝から泳出といわれています。)産卵母貝の大きさ、数、密度なども詳細に試験結果が報告されていますが、イシガイ等の貝類を飼育、増殖できる方法が確立されないと根本的な問題は解決できないと思います。
 タナゴ類はどうも貝を選択しているようで、種によって産卵母貝が異なる傾向があります。 この詳しい解説は淡水魚第3号にて紀平氏が執筆されていますが、共通するのはイシガイ、タガイが多いことです。しかし、当然ですが生息環境においてそれらの貝類がいない場合は、他の貝類にも産卵しているようで決定的な貝類はないようです。
 淀川においては1970年代すら、本流には貝類の生息は認められず、ほとんどがワンドで生息しているようで、それも伏流水のあるようなきれいな水質のワンドに集中していることが報告されています。当然、淀川の魚類の大多数もワンドで生息しているという極めて危機的な状況です。人工物であるワンドの保全がいかに困難なことであるかは、淡水魚の各号においては仔細に経過報告されています


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