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淡水魚の病気について



 アクアリウムの魚を毎日観察していても、病気に気がつくのに遅れたりする場合はよくあることです。
 というよりも、人工的な生存環境では病気を完璧に防ぐのは不可能といっても過言ではありません。
 自然環境では、病原生物から身を守る能力は十分にあるはずですが、昨今のコイヘルペス騒動のように、海外に存在するウィルス(KHV)の侵入により抵抗力のない国内のコイが感染した例もあります。現在、感染ルートは全く分かっていません。
 常識的に考えれば、アクアリウムでは良い水で健康な魚であれば、他から病原生物を持ち込まない限り、病気は防げるはずですが、完璧ということは事実上不可能です。

病気を出さない、死なせない為に (アクアリウムガイドもご参照下さい)

 水槽に魚を入れすぎ、酸素不足にしないこと。エヤレーションすることで酸素補給できるという考え方は危険です。
 水質、水量、水温によって水中に溶け込む酸素量は決まってきます。また、濾過細菌や微生物、水草の量なども大きく影響しますので、水温の高い時期に、
最低限、濾過器やエヤーポンプなどが停電で止まっても鼻あげしない状態が理想。
 水槽内の環境は毎日変化することを理解して下さい。酸素が十分にあると(飽和状態)毒物の侵入に対しても助かる率が多く、酸素不足の状態におかれた魚は非常に抵抗力、体力が落ちており、ちょっとした水質悪化でも死にいたります。鼻上げ状態はかなり危険な兆候であり、死の一歩手前です。
 自然界でも夏場の早朝に魚達が水面でパクパクと鼻上げした状態を見ることが良くあります。こういった水域では酸素不足に強いフナ類、コイ類が水域を支配している場合が多いものです。酸素不足の影響は魚種にもよりますが、体の大きい魚ほど影響が大きいものです。可能な限り大き目の水槽を使用し、魚を少なくすることが大事です。このことは水質の安定にもつながります。

 水質については別項でとりあげておきましたが、毎日徐々に悪化していきます。これは避けられません。
 完全に機能している調和水槽であれば別ですが、亜硝酸、アンモニアなどの毒性の強い物質の増加、ペーハーの低下、上昇が必ず起きます。こういった変化を緩和する為に水換えは絶対に必要になります。水道水を利用する場合は水温を合わせ、遊離塩素を中和しなければなりません。
 チオ硫酸ソーダが中和剤の主流ですが、規定量を守ること。過ぎると酸性に傾きます。但し、水道水の塩素の投入量は一定ではありません。
 家庭での使用時の量が0.2ppmあれば良いということになっています。ハイポの量は、60リットル程度の水槽なら0.27グラム、ハイポ一粒は、約0.2グラム程度ですから1粒で十分です。ハイポを利用しない方法は、交換する水道水を容器に入れ直射日光にさらして下さい。
 直射光の強い時期なら1時間ぐらいで抜けます。塩素を中和しないままの状態では、魚は皮膚や鰓に大変影響があり、元気がなくなり体色が白っぽくなる、水面近くに横転したり腹側の血管が見えてきたりします。こうなったら、ほとんど手遅れです。

 毎日、水を入れ替えするというのは、現実には趣味としてのアクアリウムでは不可能でしょう。
 多い人で一週間に一度、普通は2,3週間に一度は1/4から1/3ぐらいの水換えは必要です。井戸水は特に注意が必要で、厳重な水質検査を行なってください。そして水温が必ず違いますので要注意です。また、酸素は含まれていないことが多いので危険であることを認識しておく必要があります。特別な用途がない限り使用しない方が良いでしょう。

 残餌の腐敗、産卵行動による卵、精液などによる水質悪化にも注意して下さい。

野生魚について

 野生魚を採集する場合の方法によっても差が出ますが、釣り針のかかり方によってひどい場合は口ぐされ病にかかります。炎症を起こし、ただれたり、水カビが寄生する場合もあります。また、針を飲み込まれ、はずし方がひどい場合は、出血がひどく致命的になる場合も多く、針からはずす場合は、手で魚をつかむことにより体表粘膜がはがれ、ひどい場合は水カビ病にもかかることになります。釣による採集の場合は、必ずカエシのないスレ針を使用すること。
 スレ針を使用することで魚をバラス場合もありますが、馴れれば取りこみ方がかえってうまくなります。また、魚に手を触れずに簡単に容器に移せますので、スレ傷を心配せずにすみます。私は一番優れた採集方法と思っています。
 モンドリは、セルビンの方がスレ傷が出ませんが、大量に入ると魚どうしの間でスレ傷が起こったり、ザリガニなどが入ると最悪です。ただ、釣による採集はどうしても魚種が限定されてしまいますので、モンドリも併用することになります。もっとも、モンドリにも入らない魚種を採集しようと思えば手持ちアミを使用することになります。この場合は可能な限り目の細かいアミを使用し、手をふれずにバケツなどの容器に移してからゴミ、不要な魚種などの選定を水槽用の小さなアミでします。こういった、細心の注意を行なっていても、どこかで魚達は傷ついています。

 必ず、本水槽に入れるまでに予備水槽で、0.5%塩水などで一週間から一ヶ月程の薬浴をしながら魚を落ち着かせ、餌づけを行います。どことなく弱っているなとか、様子のおかしい魚を本水槽に入れてはいけません。野生の水草の薬浴は魚と同じようにできませんが、予備水槽で必ず様子を観察して下さい。

 不必要な貝類、水性昆虫などが付着している場合も多く、病気予防には園芸用のベンレート、ダイセンなどや、殺虫剤などを規定倍率液に30分以上つけておき、水洗いしてから本水槽に植え付けます。また、野生魚はイカリムシなどの寄生虫がついていないか良く観察しておく必要があります。

病気 薬剤は使用法を省いています。購入された薬剤の説明書に従って下さい。

 薬剤投入量は良く計算すること。また、吸着剤などを混入した濾過器は使用しない。
 サルファ剤、抗生物質は耐性ができるので短期間の使用にする。原液や薬剤の保管は注意書きをよく読んで行なうこと。病名は主因によって異なる場合もあり、魚種によって症状が異なる場合もあります。家庭内アクアリウムでは水質管理が行き届きやすく、めったに出ないものですが、養魚場では深刻な問題であり、原因究明には解剖や顕微鏡検査も必要で、薬剤の取り扱いは慎重にする必要があります。また、魚病に関しては専門書等も多く出版されていますので、まずそちらをご覧下さい。
 下記は代表的なものを簡略化して記しています。出自はフィッシュマガジン昭和57年6月号付録による一覧表です。

  • 赤斑病 病原体Aeromonus hydrophila コイ・ドジョウに特に多い斑状の出血斑が体表にみられ、環境悪化による出血性敗血症。サルファ剤、抗生物質の経口投与。
  • 立鱗病(マツカサ病) 病原体Aeromonus hydrophila コイ・キンギョなどに見られ、水腫病の一種。鱗嚢に水腫を起こし、その結果鱗が持ち上がる。体表に軽い充血を伴い、腹水症、眼球突出症も見られ、症状はゆるやかに推移する。赤斑病と同じ原因と治療。
  • カラムナリス 病原体Flexibacter Calumnaris 20℃以上の水温で発症し易い。体表に寄生した場合、綿毛状にみえ水カビ病と間違えやすい。吻端に寄生し易く、鰓に寄生した場合は鰓ぐされ症状を呈し、急速に死ぬ。スレ傷、水温の急変に注意。硫酸銅、過マンガン酸カリ、フラン剤薬浴など。混用不可。
  • ミコバクテリア症 病原体Mycobacterium fortuitum(ネオンテトラから分離) M.platypoecilus(トウギョから分離) M.piscium(コイから分離) 熱帯魚に多発し、徐々にやせ衰える。重症の場合、肝臓、腎臓、脾臓等に粟粒大の結節が見られ、ミコバクテリアが検出される。薬剤による治療法は無く、環境を良くし、栄養のあるエサを与えて、体力の回復を待つ。
  • 水カビ病(ワタカビ病) 病原体(低水温性)Saprolgnia parasitica 死物寄生体であるため、体表や鰓などが損傷を受けた時に寄生する。水温15℃以下で多発。綿毛がついたように見え、時に皮膚が崩壊、出血し筋肉や鰭条が露出する。スレ傷に注意し、水温を20℃以上に上げ0.5%塩水液で予防。マラカイトグリーンに反復薬浴。重クロム酸カリに数分間。魚卵に寄生を防ぐ為にはマラカイトグリーンに10分間貫流。
    病原体(温暖性)Aphanomyces sp. 熱帯魚に寄生する場合が多い。
  • 鰓ぐされ病 病原体Branchiomyces sanguinis 鰓葉血管に寄生し、鰓ぐされ病を起こす。窒息死に至る。止水式の小さな池では夏場に発症し易い。排泄物や老廃物などのろ過が必要。水カビ病と同じ治療法。
  • 真菌性肉芽腫症 病原体は真菌の一種とされる ある腫の真菌(水カビ)によって起きる。穴あき病と関連し、患部の筋肉内に繁殖する。何らかの原因で体表に穴が開き、二次的に水カビが浸入するものと考えられている。薬物による治療法はない。環境を良くし、栄養のある餌を与え、体力の回復を待つ。
  • 白点病 病原体Ichthyophthirius multfilis 水温の不安定な時期に発症し易い。鰓、体表に白ゴマのような白点を生じ、鰓に寄生すると窒息死する場合がある。発生した水槽、器具は次亜塩素酸溶液(商品名ハイター、ブリーチなど)で消毒する。食塩1%、塩酸キニーネ、メチレンブルー、ホルマリン、氷酢酸などで反復薬浴。水温を25℃以上に上げると1,2日で病原虫は死滅する。常在菌であり侵入防止はできない。
  • ウーディニウム病 病原体Oodinium sp. 繊毛虫の寄生により、体表や鰓がおかされる。患部には極めて小さい白点状のものが現れ、魚は落ち着かなくなり、鰓に寄生すると呼吸数増加、窒息死する場合がある。発生した水槽は、水温30℃以上に上げ、暗くしてメチレンブルー薬浴か3%塩水浴5〜15分の反復薬浴、硫酸銅の薬浴。普段から呼吸数などの観察を怠らないこと。
  • キロドン病 病原体Chilodonella sp. キロドネラというむ繊毛虫の寄生による。越冬後のコイ・キンギョに発生し易い。皮膚に青白色の濁りを生じ、食欲減退、衰弱が見られる。患部には二次的に細菌、水生菌が寄生する場合もある。ウーデイニウム病と同じ対策。
  • トリコディナ病 病原体Trichodina domerguei 虫体は円盤型で回りに繊毛を持ち自由に宿主を交換する。体表、鰓、鰭に寄生すると充血し、赤味を帯びてくる。症状が進むと鰭はボロボロになり、鱗もはがれ易くなる。対策はウーディニウム病と同じ。
  • エピスティリス病 病原体Epistylis sp. ツリガネ状の繊毛虫。水温20℃以上で発生しやすく、群れをなして損傷部位に寄生する。穴あき病にかかった魚の患部に寄生する場合が多い。スレ傷に注意。マラカイトグリーンの反復薬浴。患部に塗布するのも有効。二次的細菌感染症を防ぐためフラン剤などで追加薬浴。
  • 白雲病 病原体Costia necatrix 繊毛虫の一種。体表や鰓に寄生する。春先に多発。寄生されると著しく体表粘液を分泌し、患部は白雲状を呈する。1〜2週間で皮膚全体がおかされ斃死する。白点病とおなじ対策。
  • 腎腫大症 病原体Mitraspora cyprini 腎臓中にミトラスポラという粘液胞子虫が寄生。主にキンギョに見られ腹部が異常に膨張する。ダルマ型になったり「く」の字に湾曲し、平衡感覚を失い腹部を上に浮遊したり底に横転する。薬剤による治療法はない。
  • 粘液胞子虫病 病原体Myxobolus koi  水温20℃以上の初夏の頃、小ゴイに多く発症する。鰓に寄生すると腫瘍状となり、鼻上げし易く、時に水面を狂奔する。致死率は高い。薬剤による治療法はない。発病した池や水槽は日光消毒で胞子は死ぬ。
  • 吸虫病 Dactylogyrus sp. ,Gyrodactyrus sp. ダクチロギスは主に鰓に、ギロダクチルスは鰓、体表、鰭に寄生。魚は色あせ、鰭をすぼめ、皮膚や鰭には血の様な斑点が現れる。鰓に寄生すると粘液を分泌して呼吸困難、狂奔して苦しみ、やがて死亡する。2.5%塩水浴、1%ホルマリン液に薬浴。トリクロルホルンの薬浴が有効。
  • 糸状虫病 病原体Philometroides cyprini コイの皮下に寄生するハリガネムシ。鱗の下にとぐろを巻いたような状態で寄生。患部は炎症を起こして出血し、鱗が持ち上がって虫体が見えることがある。患部には水生菌等も付着するようになる。ピンセットで虫体を取り除く以外にない。傷口はマーキュロ、フラン剤などで細菌の感染を予防する。中間宿主はミジンコ。予防としてはミジンコをトリクロルホルンなどで駆除する。
  • ボツリオセファルス症 病原体Bothriocephalus acheilognathi コイ・キンギョ・メダカなどの腸管内に寄生。虫の体長は3〜8センチとなり腸管にびっしりと寄生する。小さな魚だと衰弱して死亡することがある。ビチオノール投与。中間宿主であるミジンコ類をトリクロルホルンで駆除する。
  • チョウ病(ウオジラミ) 病原体Argulus japonicus 温水性魚類全般の体表に寄生。4〜9月に多発。体表、鰭の付け根等に寄生し、患部は充血、出血して多量の粘液が分泌される。魚体を離れて遊泳できるので、伝播は早い。トリクロルホルンの薬浴で駆除できる。
  • イカリムシ病 病原体Lernaea cyprinaceae 魚体に寄生した雌虫が春から産卵を始め、次々と世代交代をしながら寄生。5〜10月に多発。体表、鰭、口腔内に寄生。患部は充血し頭部を組織に貫入した半透明の虫体が見える。水温15℃以上の場合、トリクロルホンでの薬浴を繰り返す。ピンセットで虫体を取り除きマーキュロやフラン剤塗布。虫体が多い場合は麻酔も必要。
  • ヒル 屋外で採集した水草、生餌、水、砂などと共に侵入。生餌にイトミミズを与えると、必ずといってよいほど侵入される。夜行性で魚体に付着して吸血する。貧血を起こし、食欲減退などの症状が出る。魚体に付着したものを取り除くには2.5%塩水浴15〜30分。水槽で発生したら器具、砂利等を熱湯消毒や濃塩水、サラシ粉等で完全消毒する。次亜塩素酸溶液(商品名ハイター、ブリーチなど)でも駆除は可能。
  • 穴あき病 穴のあく直接の原因は不明。粘液細菌と考えられている。二次的に種々の病原体が付着、寄生して急速に死に至る。水温が25℃以上で治る場合が多い。二次的病原体を正確に把握して対処する。穴が開き始めたら塩をこすりつけると治る場合もあり、抗生物質やフラン剤の併用もある程度効果が期待できる。
  • 腹水病 原因が餌によるものか、ウイルス等の病原体によるものかは不明。腹水は主に肝臓内出血管からの漏出によることが多い。原因不明の為、健康面の管理と水質管理を厳重に行なうなどの方法しか対策はない。
  • 凍傷(感冒) 水温が不安定な時期に水温の急変によって起こることが多い。元気がなくなり、鰭をたたみ、色はあせ、体を小刻みに震わせる。屋外水槽などでは、特に冬囲いなどで水温が極端に変動しないようにする。凍傷がひどい場合は表皮組織が壊死したり、水生菌が付着する。軽い場合は水温を徐々に適温にまで上げる。
  • どろかぶり病 春に流水式の養鯉池で、サナギ等の脂肪の多い飼料を与えすぎると発生し易い。表皮に白雲状の斑紋が現れ、しだいに広がって乳白色となり、皮膚がはがれる。患部には水生菌、植物プランクトン、浮泥等が付着して泥をかぶったようになる。軽症の場合は投餌を控え、アカムシ等の天然飼料や新鮮な餌に切り替える。水は清潔に保つようにする。
  • ガス病 酸素、窒素ガスが著しく大量に溶け込んだ用水に発生する。窒素ガスは地下水、酸素ガスは夏季、植物プランクトンの異常発生した池などで出易い。頭部、鰭、腸内などに気泡が溜まり、眼球突出、内出血、心臓や鰓のガス栓塞等が起こる。窒素ガスの場合は良く曝気し、プランクトンが多く発生した池などは新鮮な水と徐々に入れ替える。
  • 頭部変形症 コイの稚魚に多い。鰓ブタも内側に湾曲する。餌の食いが悪く、成長も遅れ、酸素不足に弱くなる。飼料中のリンとカルシウムのバランスが悪い為におこる栄養障害。カルシウム過剰、リン不足で起き易い。治療は困難。
  • 背こけ病 背鰭に沿った筋肉がへこみ、やせ衰える。人間の糖尿病に近い。血糖増加、蛋白尿、糖尿が見られる。飼料中の脂肪酸化生成分が原因。ビタミンEやその他のビタミン類を十分に含む餌を与え、抗酸化剤を添加した飼料を与える。極端に片寄った餌にならないようバランスをとる。
  • 脂肪変性症 全体に黒味をおびて衰弱する。貧血を起こしている場合が多く、鰓の色は薄く、活発さを失い、流れのゆるやかなところで静止するようになる。ビタミン不足の餌や脂肪過多による場合が多い。新鮮な生餌や良質の餌に替え、ビタミンB群やEを添加する。


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